おかえりなさい  

泣きたくなったらおうちへ帰ろう。

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溢れ出した水

息子との約束があり、その時間が迫っていた。
私は、ぎりぎりまで、机一杯にノートや本や電卓をひろげていて、とっても忙しくしていた。
「お母さん。ボクの事は今日じゃなくてもいいよ。」
という言葉に実はホッとした。
「あああそう。わかった。」
という返事だけかえして、私は、自分のしている事をそのまま続けた。きっと、あの子も見たいテレビがあったんだろう。ゲームでもしたいんだろう。そんな解釈をした。

しばらくして、私の「ひと段落」に気がついた息子は
「お母さん。今からでもいいよ。しようか。」
という。

私は、自分だけのまったり時間を持とうと嬉々としていたので、カチンとしてしまい、いきなり一気にまくし立てるように言った。

「そんなに自分の都合で、予定をころころ変えないでよ。お母さんはやっとゆっくり出来ると思ったのに、今からまた準備するのは大変やとよ!!」言い放った。

自分だけで精一杯の、いつもの私・・・だった。

しばらく一人で、ひろげた紙や本を片ずけながら、ホウ、としていたら息子が私のそばまでやってきた。

「おかあさん。今みたいに言われると、ボクの心の中のコップにだんだん水が溜まっていく。そして、このコップが一杯になったら、ボクはどうなるかわからん。自殺するかもしれんよ。」

息子はその時、小学校3年生だった。




「それは大変な事じゃね。」

と言って、息子に向き合った。
「自殺」とはまた・・・
息子は顔を背けていて、涙顔を見せまいとしていた。

今みたいな・・って?と頭の中で巻き戻し。
約束した事を、いつやるかについての変更。
息子を一方的に悪者にしてしまった事に気がついた。

「そのコップの水は、お母さんに叱られたりすると増えるのね。」

「ちがう。ボクが悪い時には叱られても増えない。」

「そう・・じゃあ、今のはお母さんが悪いって思うっちゃね?」

「思う。」

さすがに、「どこが?」とは聞けない。息子は明らかに自分の都合ではなく私の様子を見て、約束を先送りにしてくれていたんだろう。
私も、実はとっても助かったくせに「約束を履行しないのを息子のせい」にしたわけだ。

それでも「約束」であることには違いないので、私の時間に、果たせる余裕が出来たのなら、これからやれると考えたのだろう。

そういう一連の説明不足は仕方ない。まだ10歳だった。
それどころか、母の立ち居振る舞いを見て、今はどういう状況かまで察っしていたんだ。

「ごめん。お母さんがわるかった。あんたがお母さんの為に、時間を変更してくれたとは考えんかったわ。自分の都合かと思った。ごめん。」

息子は相変わらずあっちに向けていた顔を、下に落とした。
こんな、本気の抗議のとき「涙」は使わないつもりなんだろうか。
「自殺」という言葉で、母を同じテーブルにつけたかったんだろうか。

しばらく返事をしなかったが、「もういい。」と小さく言ってくれた。

「話してくれてありがとう。お母さん言われないとずっとわからんかったわ。どんどん水をいれっぱなしやったわね。」


「ボク」はいつのまにか「オレ」に成長し、口数も少なくなっていった。
「オレの心のコップ」には、他にもいろんな物が入っていったんだろう。
母は、息子の感受性や繊細さに気がついていたから、強くたくましくなる事を願いつつも、表情の変化に目を離せなくなっていった。

不愉快な顔、いらついた顔、ご機嫌な顔や困った顔。落ち込んだり、怒ったり・・分かってたつもりだったのに、水をくみ出してあげる事をしてなかったね。

5年後、一杯になったコップの水をぶちまけたあんたが、死ぬなんて事は考えずにいてくれてほんとに良かった。

今度はもうひとまわりもふたまわりも大きいバケツに変えて、バケツの底には排水口もつけて、どんな人から、いろんな物いれられても、要らない物なら、どんどん捨てていって欲しいなあ。

どうせ、ぶちまけちゃったんだし、これは取り替えるチャンスかもしんないよ。

「コップの水」の話は、今でも息子と話すけれど、息子は苦笑いをしながら「その日のことは覚えている。」という。
  1. 2006/09/25(月) 09:12:01|
  2. 楽我記|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:8
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コメント

パンダままさんへ

感受性は強くて、でも表現力には乏しく
それは、ひとえに私がすべて喋って代弁する傾向があったからだろうと思います。
私自身にも会話を独占しようと言う「育ちの産物」があって、
まあ、もう50前で親のせいには出来ないんですが・・

息子の貴重な一言ですよね。
今、振り返ると、ただの思い出の一言にしちゃあいけなかったんです。
痛い思いをして、あの信号を見逃していた事を反省しています。
  1. 2006/10/01(日) 20:38:36 |
  2. URL |
  3. パンダままさんへ #-
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コップの水

コップの水って、息子さんのたとえ、共感しました。
小学校3年生で、この表現!
息子さんの感性のすばらしさ、感受性の強さが、わかります。

そして、
そんな言葉が出る息子さんに対する、
ぺいんとままさんの優しい気持ちも伝わってきましたよ。
子供の言葉の中には、その子が幾つであっても、自分の思いがこもったものである事を、改めて感じました。
  1. 2006/09/29(金) 09:48:52 |
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  3. パンダまま #-
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グッチさんへ

ただいまです。
といっても皆さんのブログは読ませていただいてました。
ブログ散策もしました。
「学校を疑う」という本を見つけました。book offで105円。
読書の秋に読みふけっています。
髪も切りました。
「長州力みたいだから切る」と言うと、夫が「うん。インディアンの女にそんな髪がいる。」との弁。
長女が「あんまり短いと今いくよv-405に成るから気をつけてね。」と優しいアドヴァイス。
昔、高島玲子になるといって林マスミになって帰ってきたことを思い出させた。
夕食に全員揃ったところで言ってみたんですけど・・
「どやさ」
  1. 2006/09/27(水) 20:06:28 |
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  3. グッチさんへ #-
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ムスカリさんへ

男の子って本当に話さないですね。

主人も母親には話さなかったらしく、今も話さない。
で、義母は息子の事を私に聞いてくる。
または、息子が嫁に言えなくて我慢してるんじゃあないかと思うことを、代弁してくる。それも取り越し苦労だと、皆に責められる。

きっと、将来私も、息子に世話女房が来ても・・目が離せないんじゃないかしら・・・怖い。
  1. 2006/09/27(水) 19:54:40 |
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  3. ムスカリさんへ #-
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ハナミズキさんへ

この会話は、振り返ると息子の育て方?のおおきなヒントみたいなものだったんです。
10歳で使ったことは驚きましたが、納得できない事に講義しようとしたんですね。この後もたぶん、私は、水をたらたらと注いでたんですよ。
今は息子に「水のコップはお母さんだってあるよ。」といいます。みんな、持ってるものですよね。
  1. 2006/09/27(水) 19:48:06 |
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  3. ハナミズキさんへ #-
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ひさびさです♪

息子さんのお話、小学生のときのことだったなんて
私も驚きました。
コップの水にたとえるなんて、すごいな。
それも、ちゃんとお母さんに伝えることができるなんて
立派な10歳だったんだなぁと思いました。

コップがいっぱいになったら大きいバケツに変えて
そこから水がたまらないようにしてあげたい・・・って
ぺいんとままさんならではの発想で、それも息子くんに負けずにすごい。
今でもそのときのことを覚えていて親子で話ができるのも
素敵だなぁ、親子で何か乗り越えてきたんだなぁと思いました。
  1. 2006/09/26(火) 17:31:15 |
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  3. グッチ #-
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すごいかも・・

そういうことを小学生で、コップに水が溢れるよ・・と、たとえ話をできる息子さんは、すごい・・

文才、あるのかも・・・

そういう話はウチの息子からは一切ないですね・・
言葉が少なくて、困ることばかり多いです・・
息子から言葉を発しない限り、こちらは息子の気持ちを想像するしかないので、分からない・・と思うことばかりでした。
今も分からないですけどね・・・

親子でもお互いの都合を優先するか、相手を思いやって都合を少しでも変える気持ちになるか・・・
お互いを思いやるってことは大切かもしれないですね~~
  1. 2006/09/26(火) 08:42:04 |
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  3. ムスカリ #-
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おかえりなさい♪

息子さん、優しいですね。
自分のこと、振り返っても、ウチも娘のコップに水を入れっぱなしだったんだろうなぁって
思います。
今は、どうなんだろう。。。
とっても、考えさせられます。
今でも、やっぱり、自分の都合で振り回してるかもしれないなぁ。
気をつけなくっちゃ!
  1. 2006/09/25(月) 20:03:53 |
  2. URL |
  3. ハナミズキ #-
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